BlurParklife
90年代のUKロックシーンの頂点に立つ歴史的名盤、BLUR の「Parklife」

モッズとかパンク、ミュージックホール(19世紀から20世紀半ばの英国で庶民に愛された大衆芸能で、演劇と歌とコメディのミクスチュア)、ディスコ、ブラス、ビートルズ、キンクス、デヴィッド・ボウイといった英国のロック・ポップス史を呑み込み、そういった音楽遺産だけでなく、カルチャーや社会生活、ライフスタイルなど様々な側面から英国というものを打ち出したアルバムです。

また、プロデューサーのスティーヴン・ストリートはザ・スミスとの仕事で頭角を現し、ブリティッシュな美意識で作品を貫いている人物。

質の高い充実した楽曲群だけでなく、英国の日常を鋭い観察眼でシニカルでありコミカルに描写した歌詞(これもまた英国ならではの事象や場所にまつわる語彙を駆使しています)も秀逸です。

いわば、隅々までブリティッシュな香りで満ち溢れたショート・ストーリー集ともいえる作品です。


【全曲解説】
1.「ガールズ&ボーイズ」…夏になると南欧のビーチに押しかける若者たちの享楽ライフを表した、バンドのみならずブリットポップを代表する1曲。ディスコ風のリズムに、アレックスの弾く特徴的なベース・ラインが乗り進行するダンス・チューン。1stシングルで全英最高位5位を記録。

2.「トレイシー・ジャックス」…奇妙なリフが繰り返される、コメディー調の物語風のナンバーで、キンクス風。ある日突如キレて暴走する「トレイシー・ジャックス」の真面目な公務員の歌。アメリカでのみシングルカット。

3.「エンド・オブ・ア・センチュリー」…バラードのようなゆったりとした曲調。デーモンのフラットに蟻の大群が押し寄せてきた事件が基となっている。哀愁味のあるホーンが印象的。4thシングルで全英最高位19位を記録。

4.「パークライフ」…コックニー訛りのナレーションを表現するため、モッズ映画『さらば青春の光』で主役を演じた俳優フィル・ダニエルズをゲスト・ボーカルに迎えている、明るい曲調の中に、英国風のシニカルなユーモアに溢れた、ブリットポップムーヴメントを象徴する一曲。シンプルなフレーズで、耳に残る。メロディも素晴らしい。3rdシングルで全英最高位10位を記録。

5.「バンク・ホリディ」…パンキッシュなナンバー。長閑なようで不穏な国民の休日を描写している。

6.「バッドヘッド」…ジャングリーポップな60年代のサイケデリック風味のナンバー。グレアム曰く二日酔いに効く優しい曲。

7「ザ・デブト・コレクター」…のどかな間奏曲。レトロな遊園地のワルツのようなナンバー。

8.「ファー・アウト」…アレックスが作詞をし、自身がヴォーカルも務めている。

9.「トゥー・ジ・エンド」…フレンチ・ポップス風のロマンティック・バラード。2ndシングルで全英最高位16位を記録。

10.「ロンドン・ラヴズ」…タイトル通りロンドンへの愛情を歌うファンキーなディスコ調のナンバー。

11.「トラブル・イン・ザ・メッセージ・センター」…ヘヴィなサウンドが格好いい、グレアムのギターが滑走するブラーらしいパンキッシュなナンバー。

12.「クローヴァー・オーヴァー・ドーヴァー」…ハープシコードの調べが叙情的で美しい。郷愁を感じさせるギターポップ。

13.「マジック・アメリカ」…米国に視線を投げかけるシニカルな曲。

14.「ジュビリー 」…ブタンガスを吸いながらゲームとTVをお供に引きこもる「ジュビリー」の少年の歌で、ふざけた感のあるパワーポップ・ナンバー。

15.「ディス・イズ・ア・ロウ 」…デーモンがアレックスからプレゼントされた、海図がプリントされたハンカチをヒントにして作ったというその歌詞は、イギリス本土に様々な災害をもたらす「低気圧」について唄われており、詩の中にはビスケー湾やドッガーバンク、国内を流れる河川など実在の地名が登場する。モチーフはBBCラジオの船舶向け海上予報で、壮大なイングランドへのラブソングで、メランコリックなサイケ・バラード。5thシングル。

16.「ロット・105」…おまけ的なお遊びインストゥルメンタル。


【リリースデータ】
1994年4月25日


【チャート成績・売上】
全英アルバムチャート最高位1位・4×プラチナム(120万枚)