R.E.M._-_Automatic_for_the_People
前作がビルボード初登場1位を獲得し、名実ともに”スーパーバンド”として認知されたタイミングで発表された1992年の作品1992です。

あまりに重苦しいサウンドや内省的なトーンでこのアルバムは始まりますが、それは前作のイメージを吹き飛ばし、且つこの年代にあった”喪失感”が反映されたものであるのではないかと思います。

本作品のテーマとして、ヴォーカルのマイケルは『これは”死”についてではなく”死ぬべき運命”についてのアルバム』と語っています。ニルヴァーナのカート・コバーンは、本作を聴きながら遺書を書いたのは有名な話で、『彼らが書いたようないい曲を、2,3曲でいいから俺にも書けたらなあ・・・』と語ったこともありました。

サウンド面では、アコースティックを基調とし、メロディは叙情的で美しく、そして深い・・・U2のボノはこのような音に対し、『これまでで最も偉大なカントリーのレコード』と評しました。また、数曲で元レッド・ツェッペリンのジョン・ポール・ジョーンズがストリングス等のアレンジを手掛けています。
雑誌「SNOOZER」(現在は廃刊)の編集長、田中宗一郎は、「AUTOMATIC FOR THE PEOPLE」をこう評しています。

92年。初めて聴いた時の印象は決して心地好いものではなかったにもかかわらず、R.E.M.の8枚目のアルバム「オートマティック・フォー・ザ・ピープル」は、いつの間にか胸の奥底にしっかりと棲みついてしまった。深夜から夜更けにかけて何度も何度も聴き続けてしまうようなアルバムとして。それは多分僕個人に起こったことではなく、おそらく世界中の「ひとりぼっちのあいつ」に同時に起こった静かで、ささやかな事件だったはずだ。(「New Adventures In Hi-Fi」日本版ライナーノーツより)

暗く、陰鬱なのに、美しく、ポップでさえある本作は、何度も聴き続けてしまう魅力があるアルバムということだと思います。


【Track Listing】
1."Drive"
2."Try Not to Breathe" 
3."The Sidewinder Sleeps Tonite" 
4."Everybody Hurts" 
5."New Orleans Instrumental No. 1" 
6."Sweetness Follows" 
7."Monty Got a Raw Deal" 
8."Ignoreland" 
9."Star Me Kitten" 
10."Man on the Moon" 
11."Nightswimming" 
12."Find the River"


【全曲解説】
1.「ドライヴ」…冒頭は重苦しいトーンで始まるが、途中で入るストリングスがどこか雰囲気を落ち着かせる。陰鬱ですがアコースティックギターのアルペジオが美しい。1stシングルでビルボード誌シングルチャート最高位28位。

2.「トライ・ノット・トゥ・ブリーズ」…こちらも引き続き悲しげな儚いナンバー。アコースティックギターが鳴り響きます。

3.「サイドワインダー・スリープス・トゥナイト」…テンポが良くなり、ポップな名曲。途中挿入されるストリングスが美しく響きます。3rdシングル曲。

4.「エヴリバディ・ハーツ」…感動的なバラード曲。多くの自殺志願者を救ったと言われる。4thシングルでビルボード誌シングルチャート最高位29位。

5.「ニュー・オリンズ・インストゥルメンタル No.1」…幻想的で少しサイケデリックな印象のインストの小曲。

6.「スウィートネス・フォローズ 」…死やより大きな損失について歌われる悲しげな曲。

7.「モンティ・ガット・ア・ロウ・ディール」…マンドリンが彩るナンバー。

8.「イグノーランド」…政治的な歌詞内容でヴォーカルが力強い。

9.「スター・ミー・キトゥン」…浮遊感漂うコーラス、ギターのバックにラフなヴォーカルが乗る小曲。

10.「マン・オン・ザ・ムーン」…コメディアンのアンディ・カウフマンについて書かれた曲で、同名映画の主題歌にも使用。穏やかで優しさが伝わる感動的な名曲。2ndシングルでビルボード誌シングルチャート最高位30位。

11.「ナイトスウィミング」…ピアノに彩られた、静寂の中に美しさが溢れる名曲。ここで聴けるストリングスも筆舌尽くしがたいほどの美しさ。5thシングル曲。

12.「ファインド・ザ・リヴァー」…締め括りの穏やかなナンバー。メロディが美しく前向きな印象。6thシングル曲。


【リリースデータ】
1992年10月5日


【チャート成績・売上】
ビルボード誌アルバムチャート最高位2位・4×プラチナム(400万枚)